先日、弾丸でしたがソウルに行ってきました。昨年に続いて2回目の訪問です。
日本で韓国料理というと、どうしても「焼肉」のイメージが強いですが、それだけでなく
いろいろな料理があります。
前回も今回も強く感じたのが、韓国の食事はとにかく野菜が多いということでした。

韓国の野菜摂取量は日本の約2倍

日本人の野菜摂取量は、第二次世界大戦後ずっと減少傾向が続いており、国が掲げている20歳以上の一人一日あたりの目標値350gに対して、現状は280g程度です。

特に20~40代の野菜不足が深刻です。摂取量減少の大きな理由の一つとして、食の西洋化が挙げられると思います。

一方で韓国人の野菜摂取量は日本人の約2倍と言われています。
(2022年 一人当たり野菜供給量(消費量) 韓国 226.84㎏、日本は約90㎏)
                           ※正式な比較はデータ不足
韓国は世界でも有数の野菜摂取国です。(第一位は中国です。)
ではなぜ韓国はそんなに野菜をたくさん食べられているのでしょうか。

その理由には、食文化や食習慣が関連しています。
私が考える要因をいくつか挙げていきたいと思います。

京東市場の露店
京東市場内

キムチ文化

キムチとは、もともと野菜の塩漬けを意味する言葉だったそうです。
ハクサイ、ダイコン、キュウリといった野菜を唐辛子、塩、魚介塩辛、ニンニク等とともに漬けた発酵食品であり保存食です。(冬は寒いので野菜は栽培できないので保存食が発達しました。)

韓国の日常の食事にキムチは欠かせません。
日本ならば、うどんを食べる時に、野菜の漬物が出てくるということはありませんが、
韓国でカルグクス(韓国のうどん)を食べる時にキムチが一緒に出てくるのは普通です。
毎日、毎食キムチを食べるということが、しっかり野菜が摂れる要因の一つになっているのです。

ビビンバ

韓国の主食はお米です。
ビビンバは、「混ぜご飯」を意味する韓国の代表的な料理の一つです。
ご飯の上に、ナムルや調理した肉や魚、タマゴなどの具材を乗せて、混ぜ合わせて食べます。
日本ですと、ナムル(野菜をごま油とにんにく、塩で和えたもの)と卵だけのものが多いですが、こちらでは炒めた肉がのっていたり、魚介が使われたりしています。
今回私が食べたビビンバは、キュウリと人参の千切り、レタスがそのまま乗っていました。

日本よりも具材の量が多く、しかも野菜の量が多いのです。
イメージとしてはご飯にサラダがのっかっている感じです。
ですから、野菜がモリモリ食べれてしまうわけなんですね。

手長たこのコチュジャン和えが載っているビビンバ キムチ、大根醤油漬け、牛すじとダイコンのスープ付き
南大門市場の食堂のビビンバ(麦飯) ご飯より野菜が多かったです。
 菜っパの味噌汁、キムチ、青菜和え、海苔、もち米、ビビン麺、カルググスも付いてきます

ご飯に何か乗せて食べるものは、日本では「丼ぶりもの」が該当します。
(ビビンバのように混ぜては食べないですが、、)
牛丼、親子丼、海鮮丼、どれも野菜がほとんど入っていませんよね。

日本の混ぜご飯も、こんなに具が沢山入っていません。あくまでご飯が主役です。
しかし、

このように考えてみると、野菜をのせて食べる韓国のビビンバは
野菜の優れた食べ方だと思うのです。

パンチャン

江華島 ローカルな朝食のお店 鳥スープと、10種類のパンチャンとごはん

韓国で飲食店で料理をオーダーすると、まずパンチャンが出てきます。
ご飯と一緒に食べる料理のことを指すのですが、日本の「おかず」に相当します。
頼んでもいないのに、小さめのお皿に一品ずつ、いくつも出てきます。
場所によってはお変わり自由です。
パンチャンの代表的なものが「キムチ」です。ですから、どんなところで食べても
必ずといってよいほど「キムチ」が出てくるのです。
パンチャンは韓国の独特な食文化です。
このパンチャンだけでお腹いっぱいになりそうです。

チャプチェとチヂミを食べ時のパンチャン レンコンの煮物、青菜和え、キムチ、干し海老とニンニク芽炒め ポテトサラダ

韓国は農業国であり主食は米です。
しかし、かつて韓国が経済的に困難だった時代では白米は野菜よりも高価だったので、沢山白米を食べられない代わりにパンチャンを沢山食べるようになったと言われているそうです。
つまり野菜でお腹いっぱいにしようとしたのですね。

ですから、パンチャンのほとんどが野菜料理です。
いろいろな種類のパンチャンが食卓に並ぶのですが、
調理方法は、和える、煮る、炒める、漬けるなどバラエティが豊かです。
(ポテトサラダとかもパンチャンとして出てきました)
野菜をいろいろな調理法で食べることは、野菜をおいしく沢山食べるための
大切なポイントなのです。
このパンチャンが、韓国の野菜摂取量を増やしている一因だと考えられます。

焼き肉にも野菜

日本でも焼肉屋さんにいくと、サニーレタスなどの葉っぱでお肉を巻いて食べる事があると思います。
韓国では肉を食べる時に、サンチュ、エゴマの葉などいろいろな葉っぱを巻いて食べる習慣があります。
このように、肉にも野菜という習慣が野菜摂取量が増える要因の一つにもなっているのだと思います。

京東市場 えごまを売っている店

日本ですと、焼き肉はついついお肉だけ食べてしまいがちですが、
ちょっと意識して、葉っぱと一緒に食べると野菜を摂りやすくなるということですね。

豚のハラミの焼肉 ソウル駅そば「ソムグイカルメギサル」

伝統的な韓食を食べる人達が減少

日本でも、パスタ、ハンバーガー、といった海外から導入された食が
当たり前のように氾濫していますが、韓国でも食の西洋化が進んでいます。

近年、韓国では「パン」がブームになっていたり、カフェ文化が広がっていたり、フライドチキンがブームになっています。
(韓流ドラマでもフライドチキン屋とかおしゃれなカフェがでてきますね。)

京東市場の古い映画館を改装したおしゃれなスタバ 現地の若い人達でいっぱい

一方で、ユネスコの文化文化遺産にもなっている、みんなで一緒にキムチを漬けるという「キムジャン文化」は減少しつつあり、キムチは購入するのがごく普通になっているそうです。
(しかも中国からの輸入品が多いようです。)
また、若い人達を中心に「キムチ離れ」とか伝統的な韓国料理を食べる機会が減少しているというデータもあります。

大人気俳優 キム スヒョン君がモデルをしているパン屋@明洞

韓国でも伝統的な食文化は衰退傾向

日本の方が先に西洋化が進み、
伝統的な食文化や食習慣を失なってきたという経緯があります。
韓国も同様に、食のグローバル化などによって自国の伝統的な食文化が損なわれつつあるのが現状なのかもしれません。
また、生活習慣や働き方が変われば、食卓事情はかなり変わっているのかもしれません。
しかし、ソウルなどの大都会と農村部ではかなり食生活は違うのではないかと思います。

韓国はもともと親族などの繋がりが強く、何かあれば必ず家族とか仲間と誰かと一緒に食べるということが当たり前だったのですが、近年では個食も増えてきているとのことです。
日本と似ていますね。

確かに女性も社会進出しているので、バリバリ働いていたらパンチャンなんて作ってられませんね。
外で食べる、総菜を買って食べるのが当然増えるでしょうし、簡単にすぐに食べられるものが好まれます。
実際、辛ラーメンをはじめインスタントラーメンは日本でも有名ですが、種類が豊富でとてもポピュラーです。

総菜売り場


それでも、まだまだ伝統的な韓国の食事が食べられるお店が、日本で和食を食べる店よりも
多い気がします。
波が日本よりも遅くきているからでしょうか。
5年後、10年後にどうなっているのか興味があります。
韓国は整形大国でもあり、美容への意識がものすごく高い国でもあります。
美への意識の高い人達が、一体何を食べているのかも気になりますね。

野菜がたっぷり摂れる新しい食を

食に対する考え方が変われば食文化も変わっていきますので、
グローバル化が進み、世界中で同じようなものを好むようになれば、
各国の歴史的な食文化は当然失われていきます。
アジアでも欧州でも、どこにいってもコカ・コーラがあるように、
食は他国でも少しずつ食は浸透していき当たり前のようになるのです。

しかし、健康的な食生活には野菜はかかせないものです。
韓国でも日本でも、伝統的なヘルシーな食生活を営むのは現代人にとって難しくなりつつあります。
食環境の変化や調理の簡便化が進む中で、簡単に摂取できる加工品や飲料に頼るのだけではなく、
野菜がたくさん獲れる新しいメニューや食事スタイルで新しい食文化を創っていけないものかと今回の旅で感じました。