山形県置賜郡川西町は米沢市の北に位置し、川西町はオーガニックビレッジ宣言をしている町です。
オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組を進める市町村で、全国で50以上の市町村が自ら宣言しています。
私はオーガニックプロデューサーとして、川西町を何回か訪問させていただいています。
「ゆるく連携する」が鍵
有機農業を地域ぐるみで推進するといっても、それぞれの自治体の規模や生産されている品目が異なれば、推進していく方法も異なります。つまり前提条件が異なるのですから、よそで成功した事例をもってきたら上手くいくという訳にはいきません。
まだまだ成功事例が少ないので、実際にどうオーガニックを浸透させればよいのかよくわからないというエリアも多いようです。
オーガニックを各市町村で推進していくといっても、そもそも大量に有機農産物が作られているケースは少なく、少量ずつで、作っている品目もバラバラなケースがよくあります。すると、どう推進していくか、なかなかまとまらず方向性も打ち出しにくくなります。
生産者の場合は、生産者同士が一緒に組んで生産団体や生産グループなどを作って、チームとして連携して共同出荷をしたり、流通網を共有したり、販路開拓等を行うケースがよくあります。
しかし、自治体同士となるとどんなに小さくてもそれぞれが別々の市町村で、横連携をとるということはこれまでほとんどありません。
そこで、各市町村が独自で頑張るよりも、同じようにビレッジ宣言をした近隣の市町村同士で連携できる部分はゆるく連携したほうがよいのではないかということになりました。
自治体はそれぞれ独立した組織であり、提携するとか一緒にやるといっても現実的に難しい点も多くあります。きっちりとした形で連携するのは難しく、すり合わせができない可能性もあります。しかし、ゆるく繋がる、できるところだけ連携するといった形をとれば、それぞれの独自性や独立性も保ちつつ一つのチームになることが可能です。ゆるく繋がるというのは、多様性の時代のキーワードでもありますね。
そこで、今回、周辺の市町村にも声をかけていただき、「有機産地づくりの意見交換会」をワ行うことにしました。
連携するためには、まずお互いの事を知る、お互いの考えを知ることが必要です。
そこで、今回は、ほとんどこれまで会ったことがない周辺の市町村の行政や農業者の方達と川西町の方達と「ワークショップ」という形をとって、相互理解を深める第一歩の会を行いました。
相互理解の第一歩
参加者は生産者や生産団体の方、市町村の役場県関係者が混ざっていました。
チェックインの後、それぞれ参加メンバーの事を知ってもらいました。
次に、各市町村についてお互いにどんな風な印象をもっているのかということを共有しました。
外からみた自分の市町村の印象はこんな感じなのかという気づきなどがあったようです。隣の市町村同士でも、意外に知らないこともあります。
課題だけでなく、ワクワクすることも共有する
ワークショップデザイナーの講座で学んできたことをベースに、オリジナルでプログラムを作って、皆さんに参加していただきました。
最大のテーマは「有機農業について感じていることをお互いに知る」ということでした。こういうテーマですと具体的な課題や困り事ばかりを共有しがちなのですが、今回は「有機農業に携わって、ワクワクすること、楽しいと感じること」も共有してもらいました。
なぜなら面白い、楽しいという事が共通している方が、共感できてモチベーションが上がり連携しやすいからです。
打ち解けるならば、飲み会でもいいじゃないかという人もいるかもしれません。確かに飲み会には飲み会の良さがありますが、沢山の人と深く交流しにくかったり、交わり方が一定ではありません。
ですから、明確な目的のための専用の場(ワークショップ)で相互理解を深めるほうが、一度にたくさんの人と多面的に共有できることが多いのです。
関係性構築の第一歩として、ワークショップはとても有効な手段だと思い
ですから、今回はオーガニックの「抱えている課題」だけでなく、どういう時にオーガニックに関わって「ワクワクしたり良かったなと感じるか」というお題を出しました。
人はシリアスな課題解決よりも、面白そうというポジティブな事柄に共感して前向きになります。
すると、共感が繋がりを生み出します。ゆるく連携するポイントは、ワクワクしそうなポイントを見つけることなのです。
実際にワークの中で、皆さんがどんな点でワクワクしたりポジティブになれるかという点を見ると、
共有できる糸口が少し見えてきました。
これを掘り下げていけば、ゆるく連携していく道筋が見えてくるはずです。
連携組織を作る前が肝心
なぜ、相互理解を深めるためのワークショップを行うかというと、私が呼ばれて行って関わってきた協議会の失敗例をいろいろとみてきたからです。
地域活性化や地域産品作りも、音頭をとる行政や団体が、メンバーを選定して招集するケースがよくあります。声をかけられた人は、「〇月〇日今度新しい会をたちあげるから来てください」と言われて、会議室に集まり、挨拶されて今後のスケジュールを渡されて、プロジェクトをさっそくやりましょうといった感じです。
これですと、形だけ整えられているものの、何も中身がない状態です。
同じ街中に住んでいる、顔を知っている人たち、同業者同士でも、まったく新しいことを行う場合は、まず目的や参加する意味をきちんと共有できないと、そのプロジェクトは上手くいきません。
なぜならチームのメンバーの選び方と、招集したメンバーが共通認識をどこまで持てるかが、プロジェクトの成功の鍵だからです。まずは共通認識を持つ機会をしっかりと最初に作ることがすごく重要です。
農と食の多様性の時代の繋がり方の支援をしたい
農や食の課題はいろいろな要素が絡み合っています。その背景には、更に多様な考え方やスタイルの人達が存在しているという観点もあります。
自分と違うポリシーやスタイルの人を批判したり、自分と違うからといって排除するのは簡単なことです。
でも、似ているところや共通するところもあるはずです。100%賛同できなくても、30%共感できるところがあれば、ゆるく何か一緒にできる可能性はあります。
それを見いだして、ゆるく連携する方法を見つけていくことが、多様な農業や多様な食を根付かせて持続可能な社会を作る鍵になると考えています。
置賜地域は首都圏からのアクセスもよく、いろいろな資源がある地域です。ぜひゆるく連携していく形を作り出していただければと思っていますし、私も何かしら関わりを持たせていただけたらいいなと思っています。
食や農業をテーマにしたワークショップにご興味がある方は是非お問い合わせください。ニーズに応じてオリジナルのコンテンツもご用意いたします。