さる2024年12月4日に、山形県の川西町にて「女性同士で持続可能な食と農を考える会」が
開催されました。
川西町農業委員会が主催した会で、川西町内と周辺地域の女性農業者、学校給食関係者、産直館のスタッフ、消費者などの方々が集まりました。
全国で女性農業者は少しずつ増えていて、各地で女性農業者のグループもできています。
私自身少し前に島根県の女性農業者の会で講演をさせていただいたこともあります。
2013年にスタートした農水省の「農業女子プロジェクト」は、
農業界での女性農業者の存在感を高めたり、意識改革、女性農業者の増加などを目的に活動していて、メンバーは1,000人以上になっています。農業女子という言葉もかなりメジャーになってきました。
しかし一方では、農村部の家族経営の農家ではご主人がメインで、奥さんは農業従事者でありながら、農業経営に参画していない、就業条件などはなく単なる働き手の一人だったり、他の農業者との繋がりもないという女性農業者もまだまだ多いのが実情です。
また、地域の農地を管理する農業委員会のメンバーもほぼ男性だったりします。
つまり農業の表舞台に出てくる女性農業者はまだまだ本当に少ないのです。
女性同士のワークショップの趣旨
地域の農業を活性化するためには、農業に従事する女性がもっと前面にでてきて欲しい、そのためには、風通しをよくして、横の繋がりを創っていけたらという趣旨で企画されたのが今回の会です。
山形県内には、農業女子のグループ「あぐっと」があり、活発な活動をしていますが、町内の女性農業者とも繋げたいという想いがありました。
さらに、いろいろな立場の女性にも参加してもらいました。
地域農業の活性化を考える際には、農業者だけが集まって話するよりも、加工する人、売る人、食べる人と一緒に考えた方が、よりよい解決策やアイディアが産まれます。
そもそも女性同士というのはダイバーシティの時代に時代遅れでは?と思われる人もいるかもしれません。
しかし、都市部や大企業の当たり前が、地方や小規模な企業や組織とはかなり乖離していることも多くあります。女性が地域の中で声をあげていくことが、まだまだ難しい地域があるのです。
「あぐっと」https://www.facebook.com/yamagaga.noujo/?locale=ja_JP
ワークショップの場づくりの工夫
はじめましての方々も多く、まずは和やかな雰囲気づくりをするために、元スターバックス店員の影澤さんから、ミニコーヒー講座をしていただきました。ローストに違いや、ドリップコーヒーの淹れ方のコツなどを教えていただき、コーヒーを飲みながら会を進めていきました。ワークショップでは飲み物と一緒にお菓子も各テーブルに用意しました。
会議室は無機質で堅苦しい感じになりがちですので、スタッフの方達がお花を用意して下さりました。
ワークショップに馴染みのない方が集まる時の場作りは重要ですね。
こちらの事務局の方々とは地域計画WSなどで何度も一緒に企画・運営をしてきたので、回を重ねるごとに
一緒に改良してこれたのがとても有難です。
女性農業者への支援
農水省女性活躍推進室からは、オンラインで女性農業者の現状説明や女性農業者に対する支援事例の紹介などがありました。これまでの様々な取り組みや企業プロジェクトの成果などを説明していただきました。
女性農業者が経営参画するための学びの場や、活躍できる場が少しずつ提供されてきています。
ただ、このような支援があること自体があまり知られていないのも事実です。
私は各地で地域活性や地域農業支援のワークショップやコンサルティングを行っていますが、
女性に限らず、農業者に役立つ情報や世の中の動きがなかなか届きにくいことが、
情報格差になったり、変革が起きにくい大きな要因だと感じています。
情報共有
地域の農業や食について皆さんで考えるためには、基本的な情報の共有が不可欠です。
そこで、地域の現状を把握していただくためのデータを提示したり、農や食を取り巻く環境がどうなっているかというマクロな視点の話をしています。
なんとなく、参加者の皆さんが、「このままではダメだよね」と感じていても、
各々の認識度が違うところからスタートすると、対話がスムーズにいかない恐れがあるからです。
「持続可能性って大事だよね~」から踏み込んで考える
アイスブレイクのあとに、本題に入っていきました。
今回のテーマは、食や農をこの地域でどう持続可能にしていくかというテーマです。
農や食の持続可能性や地域活性化について話合うといっても、
あまりにも幅が広く何にフォーカスしたらいいのか難しいのです。
ワークショップでは、皆さんの何となく大事だよねというの意識を、
具体的なアクションにしていくように変えていくかが目的です。
弊社の場合は、なるべく客観的なデータの提示と、なるべく身近なテーマを選んで話し合いをしていただくようにしています。
今回は「もったいない」をテーマにして、生産現場から消費の場まで、それぞれの場で生じるもったいないを見える化して、みんなでどう解決できる方法について考えていただきました。
当日の会の模様は、NHKニュースやケーブルテレビ、山形新聞でも取り上げられました。
持続可能な農と食を考えるキーワード
ワークショップのまとめでは、皆さんの話の中から出てきた言葉と、私からまとめた言葉を最後の振り返りの中で提示して、これからの食と農について考えていくための、いくつかのキーワードとしました。
皆さんで一緒に対話したり考えたりした中で産み出された言葉を文字にして見える化することで、
一方的に話を聴く講演よりも、一人一人の心に残りやすいと考えています。
終了時のアンケートでは、ワークショップで心に響いたキーワードについて聞いたところ、
次のような回答がありました。
・見える化しないと解決しない
・互助
・主体的にみんなで協力する
・安心安全
・ゆるく継続させることが大事
・もったいない
・意識を変えること
参加者アンケート
参加者の皆さんからのアンケートです。
・農業に関わる女性の方々と話せる機会が少ないので、会って話をしたり
意見を共にできて良かった。
・皆で考えると新しい展開がある
・もったいないについて考えた時に、身近なところから取り組める解決策が
あることに気づきました。
・生産者、飲食店、消費者、さまざまな視点から食にうちて考えることができてよかった
・立場が違うと見方が違う、同じ問題点でも見え方が違うのがはっきりわかって
勉強になった。
・生産者、加工、販売、消費者それぞれのチームに分けて具体的に何をするのかを
考えると現実が変わっていくと思った。
・みんな同じように食や農について考えたり感じていることがわかった。
生産者だけでなく、色々な立場の人と意見交換したり思いを共有できてよかったです。
・生産者の意見を多く聞けて勉強になりました。
・似た想いを感じている事を共有できる機会となって良かったと思います。
・これからの食について考える良いきっかけになりました。
・嫁ぎ先が農家で今後のことで悩んでいました。皆さんと話せて有意義な時間を
ありがとうございました。
・女性同士で話す機会がなかなかないので、WSというフランクな感じで
話ができてよかった。
・もったいないについて、他の立場からもどのようにしたら解決できるか考える
ことは、視野を広げることにもつながり、とてもよいと思いました。
・参加者の次のステップ、ぜひ横の繋がりをつくっていきたい。
ワークショップの成果とは
ワークショップは、繋がりをつくる、意識を変える、知るなどいろいろな意味合いのある対話の場です。
ワークショップを企画する際にゴールはかならず設定しますが、
終わった後の成果は、会議などと違って目に見える具体的な数字や決定事項などとは限りません。
参加者一人一人の意識変化や、行動変容が成果であり、それはその時にすぐに表れるものばかりではないからです。ですから、評価する側にも中長期的視点で捉えてもらうことが大切です。
さらに、1回だけのワークショップよりも、継続して一緒に考えたり話合うことを続けていくことで、より具体的なアウトプットが可能になるので、対話の場を持ち続けたほうがよいのです。
しかしながら、女性は家事や育児などに追われてなかなかワークショップに参加できないケースもあると思います。ある程度関係性が構築できたならば、オンラインでワークショップを行ってみるのも一つの方法です。(いきなりオンラインは厳しいと思います。)
私自身は、コロナの際にオンライン講座の開き方講座に参加してオンラインでワークショップを行う勉強をしました。今はオンラインの場作りもいろいろなツールがあるので、リアルとは違った面白さや気軽さがあります。
最後に
農業関係のワークショップの際に、いつも私は参加者の皆さんに「お酒のない寄合い」とお話ししています。
昔はその地区で集まって飲んだり食べたりしながらいろいろな話をする寄合いがありました。
それがなくなってしまい対話する場がなくなってしまいました。
現代風な寄合いがワークショップだと思っていただけたらと思っています。
農と食を繋げる方法
農と食を繋げるには、様々な方法があります。
弊社はこれまで色々なコンテンツを提供してきました。
ワークショップもその一つです。
具体的な施策やアイディアを実行する前に、
まず興味関心をもってもらう
情報共有をする
信頼関係を構築する など
立場の違う人同士が、一緒に考える場と時間を共有するワークショップはとても効果的で、
課題解決をするのに一見遠回りしているようで、実は着実で近道だったりするのです。
身近な食や農の問題解決のために、ちょっと集まって話し合ってみる、
そのような場が増えたらいいなと願っています。
やり方や進め方がわからない時に、弊社がそのお手伝いが出来れば幸いです。
最後になりましたが、川西町農業委員会事務局の皆様には、企画・準備・運営で
大変お世話になりましたことを感謝申し上げます。