野菜の中で何が一番好きですか?と聞かれたら、「里芋」と答えると思います。
意外とマイナーな野菜好きなんですねと思われるかもしれません。
確かに地味な野菜ですが、奥深いというか面白い野菜だなと思うのです。
食べると控えめながらじんわりとした美味しさがたまらないのです。
でもこのままですと、食べる人が減り、作る人も減っていく野菜の一つで、
いずれ店頭に並ばなくなってしまうかもしれない、と危惧しています。
今日は里芋LOVEな私に、里芋について語らせてください!
里芋は日本人と長い付き合い
日本で稲作が始まったのは弥生時代とされています。
それ以前、つまり縄文時代は「里芋」を栽培して主食としていたと考えられています。
里芋は南方系の野菜で原産地は東南アジアの野菜ですので、縄文時代にそちらの方から伝わったとされています。
そんなに古くからあるの?と驚くかもしれませんが、日本人とは長い付き合いがある野菜なのです。

里芋は地域によって、よく食べられている品種が違う
長い間、各地で作られてきた野菜は、その土地の気候風土や食文化に馴染んでいき、その土地で変形したり変化することがあります。
例えば、ナスは地域によって形も色も硬さも違ったりして、かなり地域性の高い野菜です。
里芋も長い歴史がある野菜なので、地域によって食べられている品種が違ったり、在来種が存在したりします。
関東や東北でよく食べられている品種は「土垂」(どたれ)という品種の系統です。
しかし、関西の方に行くと「赤芽」(セレベス)という品種が一般的です。
九州のほうにいくと、「たけのこ芋」という品種がメジャーです。京都ではえびいも(唐芋)という芋をよく使います。地域によって親しまれている品種が違うわけです。
里芋といっても、見た目も違いますし、食べてみるとぬめり感、しっとり感、ほくほく感などがまったく異なります。品種によって食べた時の食感がまったく違うところが面白いなと思うのです。

里芋は、親芋の周りに子芋が付き、そこに孫芋が付きます。
親芋は食べられる品種とそうでない品種があります。

同じ品種でも土地によって味が違う
さらに、同じ品種でも場所によって味が違うのが里芋の特徴で面白いなと感じます。
昔、里芋の名産地と言われる埼玉県のいるま地域や福井県の越前大野市を尋ねた事があります。
どちらも高級料亭が産地指定して使う程のブランド産地です。
埼玉県のいるま地域の里芋農家に行った時に、私が千葉から来たというと
「同じ土垂作っていても、千葉とは違うから~」と生産者さんに言われました。
何が違うのかを聞いたら、「土質が違うんだよ」と言われました。
調べてみると、いるまでは美味しい里芋を作るために土の改良などの工夫を行っていることがわかりました。
たしかに、いるまの里芋は形がきれいだったり、大きくてもきめ細かいものが
多い気がします。(でも、千葉の里芋も美味しいです。)
最近は仕事で山形によく行っていたのですが、
あちらの里芋を購入したり、芋煮を食べたりした時も、土垂系だなと思っていましたが、
実際に食べてみると、微妙に千葉の「土垂」とは食感やぬめり感が違うなと感じたことがあります。
ワインのテロワールに似ている
土地によって異なるのは、里芋は地下で肥大する部分を食べるので、土質の影響を受けるからだと思います。
土のやわらかさ・通気性・水はけなどの物理的な性質や、pH・ミネラル・有機物といった科学的な部分や
微生物がいるかどうかなど、土の状態が、形・食感・香りに影響するということです。
また、もともと水田で作られていた作物なので、生育時には水分を多く必要としますので、水分量も影響します。
今年のようなずっと暑さが続き、あまり雨が降らないような夏は里芋にとって厳しい環境です。
(里芋畑にスプリンクラーで水を撒いている風景をみかけます。)
つまり里芋はそれだけ繊細な野菜という事なのです。
その繊細さが調理したときにじわーっとでてくるのが、すごいな、面白いなと思うのです。
そしてなんとなく、ワインのテロワールと似ているなって思ってしまうのです。
ワインも同じ品種でもテロワール、畑によって味ががかなり違いますよね。
これは里芋だけでなく野菜全般にも言える事なのですが、植物であり生き物の面白さです。
ワインのように、テロワールの「違い」を感じて楽しむのが好きなのです。。

里芋はジャガイモやサツマイモとは違う芋
里芋LOVEな私にとって、声を大にして言いたいことがあります。
同じイモでも、里芋はジャガイモやサツマイモとはちょっと違うのだ!ということです。
まず、ジャガイモやサツマイモより低カロリーな芋です。
しかし、ジャガイモやサツマイモはでんぷん質が多いので、糖質が高くなります。
糖質が高いということはカロリーが高いということです。
また、でんぷん質が多いということは、貯蔵することによってでんぷん質が糖化して
甘くなったり食味がよくなります。
つまり、ジャガイモやサツマイモは保存することで美味しくなる芋です。
しかし里芋は違うのです。なぜかというと、
①水分が多い芋。なので痛みやすい。
②皮が薄い。なので傷みやすい。
③掘り出された後も、呼吸作用が激しい、なので劣化しやすい。
④保存に適した温度帯がとても狭い(理想は10〜15℃・湿度90%前後)
低温(5℃以下)では、低温障害を起こしてしまいますし、
高温(20℃以上)では発芽してしまったり、腐敗が進みます。
すごくデリケートなんですよね。
*呼吸作用:収穫後も野菜は呼吸をしている。
細胞が活発に呼吸すると、水分と養分を消耗するので劣化する。
つまり、同じイモでもジャガイモやサツマイモとはまったく違うんです。
里芋は掘り出してから長期保存するのは難しい、保存しておいしくなる芋ではないのです。
ですから里芋はさっさと食べたほうがよいのです。
これからグッと寒さが増すので、保存している里芋はどんどん劣化していきます。
お正月を過ぎる頃になると、店頭のお芋も傷んだものが増えてきますよね。
今のうちにせっせと里芋を楽しんでいただきたいのです。
ご家庭で里芋を保存する際は、もし野菜室に入れるならば新聞紙にくるんでからビニール袋に入れるなど
湿気を保ち、寒すぎないようにしてあげてください。玄関など涼しいところなどでも良いと思います。
生産量も消費量も減少傾向な里芋
長く食べられてきた里芋ですが、生産量も消費量もかなり減少しています。
大きな要因としては、食の西洋化などで、和食の煮物などに使う野菜全般はあまり人気がなくなっていることと、調理の簡便化によって、下処理が面倒な野菜や調理に手間のかかる野菜は敬遠されてしまっていることです。食べる人が減れば、作る面積も減少しますね。
いずれ店頭から消えてしまう悲しい運命なのかもしれません。
里芋をもっといろいろな料理で活用できたらいいのに、、、ということで、
今から15年ぐらい前に千葉県で「ちば丸」というぬめりや独特な香りが少ないコロンとした形の
新しい品種が開発されました。これは洋食でも中華でもどんな料理にも合うタイプの里芋です。
私はそのお披露目のイベントで食べ方提案の仕事をした関係で、「ちば丸」に出会い、
実際に自分で試したり、レストランに紹介をしたりしました。
シェフたちからは好評でしたが、栽培しにくいなど課題があってなかなか普及していません。
美味しい芋というだけじゃだめなんですよね。

下処理が面倒なあなたに ~里芋は電子レンジ調理に向く~
里芋がなかなか愛されない理由として、汎用性だけでなく下処理が面倒ということがあります。
痒くなってしまう人もいますし、ぬるぬるして剥きにくいのが嫌という人もいるでしょう。
確かに里芋は皮を剥くのが面倒ですが、剥かずに下処理することもできます。
そう、電子レンジが強い味方なんです。里芋は水分量が多い芋で電子レンジ調理に向くのです。
下処理の方法は以下のとおりです。
①里芋の天地(上下)を薄く切り落として、皮はそのままで耐熱皿に入れてふんわりラップをして、
竹串をさしてスーッと入るまで電子レンジにかけます。
(量とワット数によって時間は異なりますが4.5個で3分以上かかります。)
②そのまま粗熱を冷ましてから皮を剥きます。
すると、簡単につるんと剥けますのでストレスなしです。
(キッチンペーパーで包むと滑りにくいです。)
ここまでやっておくと、便利なのです。このままラップして冷蔵庫に数日入れておいても大丈夫です。
里芋は色々な食べ方ができる
現在流通している土垂やセレベスなどの里芋でも、いろいろな食べ方ができるのです。

上の田楽味噌がけは、電子レンジで加熱して剥いたものに田楽味噌をかけるだけです。
私はレンジ加熱の後に唐揚げにします。
【里芋の唐揚げ カレー醤油風味】
①醤油とカレー粉を混ぜたものをビニール袋に入れて加熱済みの里芋によく絡ませます
②小麦粉あるいは片栗粉と小麦粉を同量混ぜたものを①にまぶします
③揚げ油で揚げます。

軟らかくした芋をスライスしてペペロンチーノ風に焼いても美味です。
私は、グラタンでしたらミートグラタンなどこっくりした味のもののほうが、クリーミーなミルク味のものよりも好きです。

里芋をおいしく食べるコツ
それはズバリ! よい状態の里芋を選ぶことです。
形の良い芋、土垂ならば縞々模様がはっきりしているもの、傷んでないものを探します。
私は出先でも、秋から冬ですと野菜コーナーにいくと、里芋をチェックします。
いいお芋があると、ついつい買ってしまいます。。。
ブランド産地の里芋は、お値段がちょっと高いですが品質は安定しています。

里芋の美味しい食べ方ですが、
里芋自体に味は強くないので、
煮物のように中まで味をじっくり浸透させてあげるか、周りにしっかりめの味をつけるか
どちらかです。
前者は煮る、蒸すです。後者は、揚げる、焼く、炒めるなどですね。
最後に
里芋には茎の部分も食べられる品種(八つ頭、セレベス、海老芋など)もあります。
昔、千葉ではお正月によく食べる「八つ頭」を近所の岩澤さんというおばさんが作っていました。
いつも私のことを孫みたいに可愛がってくれていて、野菜のこと、畑のことを色々教えてくれました。
一緒に里芋畑にいくと、芋を掘り起こした時に茎と芋の境目の部分を切ってくれて、
家に帰ってからそれを味噌汁に入れて食べさせてくれました。
茎と芋の境目は、茎っぽさと芋っぽいとろみがもあって、
なんとも不思議な食感でとても美味しいのです。
私にとっておばさんとの大切な思い出の一品です。
この部分は里芋を作っている農家でないとなかなか食べられないものですが、
またどこかで機会があったら食べてみたいなと思っています。
今回は、私の大好きな里芋のことを書いてみました。
もし里芋を見つけたら、ちょっと仲良くなってみていただけたら嬉しいです。
