ホウレンソウは個人的に大好きな野菜の一つでもあり、
ぜひ皆さんに食べていただきたい野菜です。
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でも、最近人気が落ちてきているんですよね。
あまり買わないな~という方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方にも、ぜひホウレンソウの良さを再認識していただけたらと思って、
取り上げることにしました。
ホウレンソウの旬は?
ホウレンソウの旬は、一般的に秋から冬と言われていますが、
特に真冬の1,2月頃がベストです。
そもそも「旬」とは、植物としての野菜や果物が無理なく生育して、
一番沢山収穫して出回る時期のことを言います。ですから価格が安いわけです。
また、旬の野菜は旬以外の時期よりも栄養価が高いのが特徴です。
しかし、私がこれまで野菜ソムリエの授業や料理イベントなどで、
「ホウレンソウの旬はいつですか?」と聞くと、
夏、秋、冬、春、、、とバラバラの答えが返ってきました。
それは、ホウレンソウが一年中出回っているからです。
なぜホウレンソウは一年中売っているのか?
では、なぜ一年中出回っているのでしょうか?
それは、栽培技術や品種改良などによって、
本来の旬以外の時期にも、作れるようになったからです。
ちょっと難しい言葉ですが、促成栽培、抑制栽培という技術があります。
旬よりも早いタイミングで栽培したり、遅くずらして栽培する技術の事ですが、
これが発達したことによって、本来の旬でない時期にも
野菜や果物が栽培できるようになりました。
旬を前とか後にずらして栽培するようになり、
だんだん、もうちょっと早く作ってみよう、もう少し後に長く作ろう、、、としているうちに、
一年中作れるようになっちゃった、、というわけです。(すごく簡単に説明しています)
また、もともと日本で主に作られていた日本ホウレンソウ(東洋種)は暑さや病気に弱いのですが、暑さや病気に強い西洋種と掛け合わせて品種改良して、冬以外の時期にも栽培できるようになったという背景もあります。
現在流通しているものは、西洋と東洋の血が混ざりあっているものがほとんどです。

赤い根っこのところが美味しい
ホウレンソウを食べると強くなる
1960年代に「ポパイ」というアメリカの人気アニメが日本でも流行しました。
ポパイという主人公がピンチになるとホウレンソウを食べて強くなって超人的なパワー全開になって天敵のブルータスをやっつけてオリーブを助けるというストーリーです。
ホウレンソウを食べるとポパイみたいに強くなれる!というイメージができて、
実際にこのアニメをきっかけに米国ではホウレンソウの消費量は大きく伸びたそうです。
実は私もこのアニメを見てホウレンソウってすごいんだな~と子供心に感じたものです。
(歳がバレますね、、、)

ホウレンソウは青菜の王様
ホウレンソウには豊富な栄養が含まれています。
ビタミンC、カロテン、ビタミンB群、鉄分、葉酸、食物繊維などが豊富で、
疲労回復や免疫力向上に役立ちます。
緑黄色野菜の中でも抜群の栄養価があるので、「青菜の王様」と呼ばれていました。
ですから、ポパイのパワーの源としても説得力があるわけです。
王様から転落?
しかし青菜の王様として絶対的人気があったホウレンソウが、
近年は人気がなくなってしまっています。
昔は人気者だったけれど落ち目??
そんな風には思いたくないですが、
売り場でホウレンソウよりも幅をきかせているのはコマツナです。
(コマツナも大好きです)
マーケティング用語で、「フェイス」という言葉があります。
売り場に陳列する商品のパッケージ正面、陳列面のことを指しますが、
同じ商品を横に何個並べるかをフェイス数といい、フェイス数が多いほど、
人気がある商品で、お客様の目に留まりやすくなり選ばれやすくなります。
幅を利かせているという言葉を使いましたが、
青果売り場のコマツナのほうがフェイス数が倍ぐらい、あるいは倍以上多くなっています。
ホウレンソウとコマツナでは、人気ぶりにかなり差がついていることがわかります。


ホウレンソウよりも小松菜が人気な理由
なぜホウレンソウよりもコマツナが人気になったのでしょうか?
一つ目の理由として、調理の簡便化・時短化の流れがあります。
ホウレンソウはアクを除く為、下茹でして水にさらす工程があります。
しかし、コマツナはアクが少ないので下茹で不要で、
そのまま炒めたり煮たりできるから現代の食生活にマッチしているのです。
二つ目としては、調理の手間や難しさもあります。
ホウレンソウの茹で加減は難しいと感じる人もいると思います。
確かに、茹ですぎると色が悪くなってしまったり、食感がふにゃっと溶けたような感じにもなります。
どの位茹でるかが意外と難しいんです。
また、茹でた後に水に晒しすぎると栄養価が流出してしまうので、晒す時間も気にする必要があります。
また、水気を一度絞っても、時間が経過するとまた水がでてきて再度絞らなければなりません。
確かに、ちょっと調理の難しさがある野菜なのです。
しかしコマツナはホウレンソウよりも加熱耐性が高く、多少加熱しすぎてもシャキっとした食感が残ります。つまり調理しやすいので調理初心者でも扱いやすい野菜なのです。
三つ目は、栄養評価軸の変化です。
ホウレンソウは栄養成分表でのそれぞれの栄養素の含有量の数値の高さが際立っていました。
だからホウレンソウはすごい!と言われていたのです。
しかし、栄養学というのは日進月歩で考え方や捉え方がどんどん変わっていきます。
最近の栄養学では「含有量」だけではなく、「吸収率」や「利用率」なども考慮するようになり、
ただ含有量が多ければすごいとは思われなくなってきました。つまり栄養の評価軸が変化したのです。
ホウレンソウは確かに栄養素の含有量は多いが、吸収率はそんなに高くない、
アクの成分であるシュウ酸は、ミネラルと結合しやすいなど、
数値は高いが、効率よく使えるとは限らないという理解が広まってきました。
また水に晒すので、どうしても水溶性のビタミンやミネラルの一部が流出してしまいます。
これに対してコマツナは、そのまま調理できる、調理のムラが少ない、調理後の栄養素が残りやすいというメリットもあります。
そして四つ目として、売り手側の事情もあります。
店舗の売り場で陳列していると、コマツナよりもホウレンソウのほうが早くしんなりしてきてしまいます。
陳列してから劣化するのが早いことを、「棚持ちが悪い」と言います。
棚持ちが悪いということは、傷みやすく廃棄ロスに繋がりやすいということです。
ですから、売り場側としてもコマツナのほうが良い状態で長く売りやすいのです。
ホウレンソウは、時代の流れや考え方の変化によって、
絶対王者から、青菜の中の一つというポジションになってしまったわけです。
別にコマツナを悪くいうつもりは毛頭なくて、、、コマツナもいい野菜で大好きです。
コマツナについては、このブログを是非お読み下さい。https://courtyard.co.jp/letter/%e6%99%82%e4%bb%a3%e3%81%ae%e6%b5%81%e3%82%8c%e3%82%92%e6%84%9f%e3%81%98%e3%82%8b%e9%87%8e%e8%8f%9c%e3%80%80%e5%b0%8f%e6%9d%be%e8%8f%9c/

寒い時期にピッタリ。温まりますよ!
冬のホウレンソウがおいしいワケ
そうはいっても、ホウレンソウは本当に美味しい野菜なのです。
私は常々、野菜は薬ではないので、栄養価だけで野菜を評価しないでほしいと思っています。
「美味しい」という五感で感じられる事がとても大切だと考えています。
なぜならば、美味しいからもっと食べたい、沢山食べたいと思えるのが本能的な欲求だからです。
ホウレンソウの美味しさ、特に冬のホウレンソウが美味しいワケについてちょっと語らせてください。
ホウレンソウはトマト程沢山の量ではありませんがアミノ酸を含んでいますので、
うま味を持っている野菜です。
甘味を感じると思いますが、糖も含んでいます。
さらに多少でもアクがあり、独特な青臭さもあります。
これらが微量の苦み成分となっているのですが、
苦みや青臭さはうま味を立体的に感じさせる役目があるのです。
また、噛んだ時に小松菜のように繊維が残らず、ほどけていくような感触があるので、
口の中で味の広がり方が豊かに感じます。
特に旬の時期のホウレンソウの美味しさが格別なのは、冬の寒さのおかげです。
植物は低温などの環境ストレスにさらされると、
細胞を守る為に代謝や成分組成を変化させる適応変化させます。
ホウレンソウなどの葉野菜は、細胞が凍結しないために、
浸透圧調整物質である糖類や遊離アミノ酸などが増加します。
ですから、真冬のホウレンソウは、甘味とうま味が強く深くなるのです。
寒さに耐えて生育するため、茎も太目になり葉もしっかりとします。
また、栄養価も旬とそうでない時期のものを比較すると、旬の冬のもののほうが
高いというデータもあります。
今の時期のホウレンソウは、おいしいだけでなく栄養価も高いということです。
しかし真冬のホウレンソウでも、ハウスで栽培されているものや、密植栽培されているものは、
茎が細くて長く、葉も柔らかいものもあります。
美味しさを優先するのならば、しっかりと外で寒さにあたっているものを選ぶのがお勧めです。

(いか、ホウレンソウ、トマトを炒めて煮た料理)
しっかりとした冬のホウレンソウで作ると美味しい料理 ちょっとくたっとしたホウレンソウが美味しい
茹でるか電子レンジか
最近、野菜は茹でるよりも電子レンジのほうが栄養素の損失が少なく
ガス代や水道代が節約になる等の情報を耳にします。
たしかに、時短や効率を考えるとそのほうが良いかもしれません。
でも、美味しさという観点から考えると、私は「茹でる」のをお勧めします。
なぜかというと、ちょうどよい食感にするには茹でるほうがよいからです。
茹でる場合、茎のほうからお湯に入れてその後に葉の部分を入れる事が出来るので
火の通り方をちょうどよく調整することができます。
しかし、電子レンジだと微妙な調整は難しくなります。
また、アク(シュウ酸)は水溶性なので、
熱湯で茹でてから水に晒すことで減少させることができます。

お菓子でも料理でも、「繊細なおいしさ」ってありますよね?
ホウレンソウにもそれに通じるものがある気がしています。
それに加えて、調理してしっかりと味わう価値のある野菜でもあると思います。
ちょっと下茹でするなんて面倒だと思われるかもしれませんが、
ホウレンソウはそれをする価値のある野菜です。
ただ茹でて、醤油やポン酢をかけるだけでも美味しいですし、
ベーコンと炒めた時の美味しさは、コマツナや他の青菜では味わえない美味しさです。
さらに、この時期のホウレンソウだからこそ、より存在感のある美味しさが味わえます。
是非、真冬のこの時期にしか味わえない美味しさに出会っていただけたら
幸いです。
