私は、大学で「環境と食文化」という講義を担当しています。今年で5年目になりますが、毎年学生の雰囲気や反応が違うのを感じてきました。
しかし、今年の学生達は雰囲気が違うとかいう話ではなく、環境が変化しているのを感じます。

お金がない

今年、講義を受講している学生達の口から、最近ポロっと「お金ないんですよね」という言葉が出てきます。これまであまり聞かなかった言葉です。

履修している学生は、一人暮らしをしている学生が多く、部活をしていたり、バイトをしている学生もいます。話を聞くと、生活を一所懸命やりくりしている様子がうかがえます。
この物価高で食料品の高騰はかなりの打撃のようです。仕送りをしている親御さんたちもきっと大変でしょう。私も娘が大学生で一人暮らししていたとき、仕送りはお金がかかるなと感じていましたが、あの時よりずっと大変な状況だと思います。

紅玉りんごの皮ごと使ったジャム 保存のメカニズムを学習したあとの保存食づくり 古くなったリンゴの活用方法にも

今日のワークショップでは、保存食作りをしました。その際に、マヨネーズとほんの少しだけバターを使ったのですが、「最近マヨネーズ高くなってなかなか買いづらい」「バターは絶対手が出ない」という声がありました。実習で少しだけ残って次回に保管しておけない食材などは、「欲しい人は持って行っていい」というと、本当に嬉しそうにすべて持って帰ります。
自分達の想像以上に厳しい学生生活を送っている若者は少なくないように思います。

傷みやすいキノコを食品ロスにしないために、加熱して保存するなめたけを作りを体験、そこからパスタに。

困窮する学生に対する食の支援

困窮している学生に対して、お金で支援している団体もあるようですが、なるべくお金をかけないで、知恵や工夫でバランスの取れた食生活ができる方法を、先人の知恵を持つ大人が若い人達に伝える必要があると感じます。一生役立つ支援ですね。

細かい食の情報はSNSからいくらでも入手できる時代ですが、フェイクもありますし、誇張されているものもあります。ネットで見て知っているというのと、できるということとは異なります。
実際に体験したり、作ってみて、体得しないとわからないことが沢山あるからです。

もったいないをなくす


今の若者たちは、社会課題について関心が高いと言われています。しかし、食品ロスという大きな社会課題を考える時も、何がもったいない行為なのかが理解できなければ、具体的な行動に結びつかないですよね。
本当に小さなことですが、先日のワークショップでは、シイタケの軸を捨てようとしていたので、そこも食べられる、使えるという話をして、実際に手で裂いて見せたりしました。「ああ、こうやって使えばいいんだ」と具体的な方法が解れば行動に繋がります。

一人の大人として、食に携わってきたものとして、できることをやっていきたいと思いました。