先週は、山形県の川西町の農業委員の方々向けにワークショップを行ってきました。
約30名の委員の皆様に集まっていただき、地域計画についての説明と、町がオーガニックビレッジ宣言をしたことをうけて有機農業についてのガイダンスを聞き、その後皆さんで川西町の10年後を考えていただきました。

地域計画とは?

ちょっと難しい話なのですがシンプルにお話しをしますと、
今年(令和5年)四月に施行された農業経営基盤強化促進法等の改正がなされました。
これは、これまでは、担い手に農地を「集積」していくという考え方でしたが、今後はそれを進めて担い手が農業をしやすいように、分散している農地をまとめていく「集約」という考え方に基づいて農地を整備していくことが決まりました。

これを推進させるために、各自治体は10年後に地域の農地利用を示した【地域計画】を約1年半後までに策定しなければならなくなりました。(結構無茶ぶりな話なんですが~)

集約するためには、具体的に地域のどの農地を誰が担うのかという「目標地図」を作らないといけません。各地区の農業委員会のメンバーが地域農業者と話し合ってそれを決めなければならないことになりました。

デリケートな農地の話を取りまとめるために

想像がつく方もいるかと思いますが、農地の話はとてもデリケートですし、なかなか難しい話です。そんなに簡単にとりまとめ出来るものではありません。

農業者といっても専業農家もいれば兼業農家もいますし、年齢もバラバラ、それぞれ考え方や置かれた状況も異なります。さらに高齢者が多い地区では、10年後は未来を描こうとしても、その頃には担い手がいなくなっていることが予想されます。単に協議の場をもっても簡単に取りまとめられないのです。

とりまとめをするためには、メンバーの目的意識の共有や、合意形成に至るまでのコミュニケーションの仕方や、話し合いの進め方等がとても重要になってきます。

しかし、もともと地域には昔からのしがらみがあったり、複雑な事情があるところもあります。
更に特にコロナの影響で人的交流が更に減少してしまっています。昔は、地区の寄合とかがあってちょくちょく顔を合わせてお酒を呑みながら色々な話をしてコミュニケーションをしていたのでしょうが、現代はそういう緩い感じで話す機会も消えていってしまっています。

そこでまずは農業委員同士の交流や目的意識の共有のために、委員向けにWSをやって欲しいという依頼が来たわけです。

10年後の農を考えるオリジナルワークショップ

今回のWSでは、チームビルディングの要素をいれたり、地域や農業を絡めたオリジナルワークを行いながら、10年後の川西町の農の在り方について考えていただきました。

今回のWSのゴールは、それぞれが違う意見であっても、まとめられるポイントはあることを体感してもらうこと、話し合いの進め方のヒントを学ぶことでした。
川西町はたびたびコンサルティングで訪れたり、農業者の方々と会議をしていますが、今回は年齢層の高い人達が多かったですし、テーマが難しかったので、私にとって結構ハードルが高かったのですが、設定していたゴールはクリアできました。

最後にまとめとして、これから各農業委員さんたちが今後地区で話し合いをしていくためのヒントもお話ししました。

10年後の農を考えるって、意外に難しいんですよね。
どういう視点から考えたらいいか、
参加者の構成や背景も関係してきます。

ワークショップの最初は怖い顔をしていた人達も、最後は和やかな表情でした。(これが嬉しいし、大事なんですよね)

参加者の声

参加者の方々からは、次のようなコメントをいただきました。
・それぞれ個人の考え方があること、共有することの大切さを感じた。
・普段は10年後の事なんて考えていないと気が付いた。
・それぞれの立場を理解しながら町の未来像を描いていければと思った。
・川西町の10年後のありかたや各々の考え方がわかった気がしました。
・すぐに10年後の事を計画する余裕はないが、身近なところに共有できる
 人達がいることは良いと思った。
・コロナの影響で、情報交換の場が少なくなっていたが、皆で話をして
 共有したり共感したりできたことが楽しく感じた
・ワークショップという形で意見交換をする楽しさや気さくさを感じた。
・いろいろな意味で新鮮だった。立場関係なく自由に話が出来るのが
 良かった。
・自分の思っている事、考えている事の他にこういう想いや考え方も
 あるんだと感じました。
・地域の方々の考え方、意見をもらうには、今回のWSのような場が
 必要。特に農地の賃借など重い話をする前にはアイスブレイクが重要。
・ゆるく繋がるという事が良かった。

主催した農業委員会のスタッフからも、
・WSは参加者に大きな影響を与えられた、
・委員同士が深く意見交換がする初めての機会になってよかった
・自分達も今後どう進めていくかのヒントになった
等の言葉をいただきました。

よそものを上手に活用してほしい

ワークショップデザイナーとして、食だけでなく農の世界でも役立てることは嬉しいことです。農産物による地域活性化で培ってきた経験や知識も役立っています。
農のワークショップは、全然農業の事がわからないとファシリテートできないと思いますし、農業の世界は個性が強い人が多く、フラットな立場の人が少ないので、私のような立場の人間が役立つのではないかと感じました。
さらに、地域内だけの話し合いですと、会議をしても閉塞感が産まれてしまうことがあります。
地域活性には、よそもの、わかもの、ばかものが必要とよく言いますが、私はよそものなので、私を上手に使ってくれればいいと思っています。(ばかものでもあるかも~)

夜の懇親会では、委員の皆様と町や農業の話などいろいろ個別に話が出来ましたし、最後はラーメン屋さんで禁断の締めのラーメンまで食べてしまいました。