2023年12月22日に、栃木県塩谷町で「地域計画策定にむけた未来の農地利用を考えるワークショップ」を行いました。塩谷町は、日光市の右隣に位置している栃木県で一番小さい町で、日本百名水にも選ばれた名水と自然豊かで静かな環境のところです。

国の方針で、全国の各市町村は、10年後のめざすべき将来の農地利用の姿を明確化した「地域計画」を策定しなければなりません。
この地域計画は、「地域の農地を誰が利用して、農地をどうやってまとめていくか」、「地域農業をどのように維持・発展していくか」を、農業者、関係機関、農業団体などが一体となって話し合う必要があります。 
各地区において、地域計画を策定するために話し合いを進めていくためには、各地区の農業者をとりまとめていく農業委員会のメンバーや、それをサポートする立場がキーパーソンになります。
しかし、農業委員会のメンバーは、専業農家の方とは限りません。地域や地区によっては兼業農家、あるいは非農家の方がなっている場合もあります。

農地利用のとりまとめ役

農業委員会の方々は、通常、農地の売買や賃借の許可、転用などへの意見、遊休のうちの調査などが主な仕事です。
ですから、地区の農家を集めて、地域計画を説明して未来の農地利用の計画を創っていくための話し合いをするのは初めてです。

そもそも、高齢化が進み耕作放棄地が増えている中で、各農家の意向を聞いてその地区の農地をどうしていくかという計画を立てること自体がとても難しいことです。
更に、コロナの影響もあって、農村地域でも地区内のコミュニケーションが希薄になってしまったと言われています。人間関係や信頼関係がきちんと構築されていない中で、農地というシリアスなテーマの話し合いをするのは困難なことです。
その話合いのファシリテーターやコーディネーター役を担うのが農業委員会のメンバーやそのサポート役の方々です。いきなり、そんな大変な役目をしてほしいと言われても、困惑してしまいます。

ワークショップを知るには、まず体験するのが一番

そこで、農業委員会のメンバーと、塩谷町の地域計画策定サポートチームの方々にお集まりいただき、
研修会を催すことになりました。
まず、ワークショップという言葉が耳慣れない言葉ですし、会議とどう違うのか、どういうものなのかを実際に体験していただき、ご自身がワークショップ形式で話し合いの場を構築する際のポイントも最後にお話ししました。

ワークショップの途中から見形町長も参加されて、和やかな雰囲気で進みました。
日頃から町長と農業委員会や他の方々との距離も近いように感じました。

昨年春に川西町でも地域計画のWSを行いましたが、その時はほぼ男性ばかりでしたが、今回の塩谷町の場合は農業委員会以外のサポートチームメンバーもいらしたので、女性の参加くかなり雰囲気も違いました。

各グループの意見を見える化して共有

農業に対する想いを共有する

最後に皆さんに農業に対する想いや考え方を共有してもらいました。
ワーク後の感想では、
 ・同じ事で悩んでいるのだとわかった、
 ・人によって考え方や意見が違うのだと感じた
 ・地区によって特色があるのがわかった
 ・色々な意見もあったが、共感できることが多く安心した
などの感想がありました。
まずは、自分以外の人が何を考えているのかを共有することで、
本音で地域の未来を話し合う場を作っていけるのだと思います。

ワークショップ体験の感想

参加者の方々はワークショップという名前を初めて聞いた、
なんだかよくわからないまま参加なさった方が大半だったと思います。

WSの最後の感想を少しご紹介します。

 ・今日は講師を招いて研修をやるということで参加したが、
  受付でWSをやると言われ、話ベタな私は気分が下がったが、
  始まってみれば気楽に意見が言えて、他の人の意見も素直に聞けた。
 ・良い話し合いをする為には、良い雰囲気づくりが大切なんだと感じた。
 ・会に参加した一人一人の考え方が引き出すことができるように、話し合いを
  進めていけたらいいなと思った。
 ・地域計画は大変だが、あきらめないでクリアしてやらなければならないと
  思うし、必ずやるつもりで取り組む。
 ・地域計画を進める上で、WSは非常にありがたい内容でした。
 ・自分が住んでいる町を見直すことができた。他の人との意見で見方の違いを
  気づき、とても楽しく話をすることができた。
、・持続可能な農業・農村には、老若男女色々な方、誰もが役に立っていられる
  にはどうしたらいいのかなと考えた。
 ・皆さんの素直な気持ちがわかったのが面白かった。
 ・これまでの会議の進行やあり方とはかなり違うことがわかった。
  これから少しずつ変わらなければならないと思う
 ・地区で誰がファシリテータをやるのか、高齢者には難しいと思う。
 ・様々な考え方や意見がある中で、話し合いは重要になる。
  楽しい雰囲気で意見を出し合ったり、その内容や理由を共有できる
  WSは、良いやり方だと思った。

ワークショップは難しい課題を解決するための方法


ワークショップは今回の地域計画のように、単純でない課題を解決するために
役に立つ話合いの方法
です。
会議とは違い、時間をかけて結論をだしていくので、会議に慣れていると
ちょっと時間がかかるので、効率的にみえないかもしれません。
しかし、じっくりと本音で話し合って納得をしながら進めていけるので、
後戻りがない、こじれにくいというメリットがあります。
時間がかかるように見えても、実は確実でありますし、近道である場合もあります。

最後に

今回皆様にワークショップを実際に体験していただいたことが、
これからの話し合いに役立ったら幸いです。

日本では昔から農村のコミュニティーが地域を支えてきた歴史があります。
しかしそれが崩壊してしまった今日、農地をどうしていくかはその地域の
死活問題にも直結します。

日本全体を見れば、人口が減少して、食料生産していた農地が減少していく
傾向は顕著です。その中で10年後、その地区で、地域住民と農業が良い形で
関係性を構築できるお手伝いが少しでもできるならばと願っています。

とても柔らかいおいしいお水でした