商品開発の鍵は人と人の繋がり方

日本の各地域で食による地域活性をしようという試みが行われています。
成功するところと、そうでないところの違いは何でしょうか?
農産物を使った地域産品開発や六次化の商品開発を多く行ってきましたが、成功にはいくつかのポイントがあります。
その一つが「人と人の繋がり方」です。
事業計画がどんなに素晴らしくても、それを遂行するためには「人をどうやって巻き込んでいくか」という視点が重要です。
先日の大船渡での講演では、農産物や食品の開発における地域と人の繋がり方のポイントについて講演させていただきました。

いわて三陸ベリー研究会

岩手県大船渡では、三陸の夏の冷涼な気候を活かして、夏いちごの生産で地域に新しい食の産業を創り出そうとしています。地域内の加工業者や食事業者と生産者が繫がり「いわて三陸ベリー研究会」を発足させました。その方々を中心に「イチゴの魅力と地域活性化への可能性について」というテーマでお話しをさせていただきました。

冬春イチゴはレッドオーシャン状態

イチゴは、トマトと並んで大変人気のある農産物です。店頭を見てもわかるように、新しい品種のイチゴが毎年のようにでてきます。もうどれが美味しいのかよくわからない位の種類があって、競合が多いレッドオーシャン状態とも言えます。

夏イチゴは実需者用需要

生食用イチゴの多くは、冬春イチゴでクリスマスに照準を合わせて作られています。冬春イチゴは3月頃に終わり、そのあとはほぼ店頭にイチゴは並びません。
しかし、ケーキなど夏でもイチゴを必要とする実需者が存在します。その時期は米国から輸入が主です。
輸入イチゴは、酸っぱくて甘さが弱く、粒粒していて、そのまま食べると普段食べている日本のイチゴとの差に驚くような味です。
夏秋イチゴは、国内でもごく一部生産されていますが、ほぼケーキなどの実需者向けの供給なのが現状です。

生食用夏イチゴの生産

三陸地方は、夏でもやませの影響もあり、イチゴの栽培適温内であることから、夏いちご生産が始まりました。この夏いちごで地域を活性化しようというのがこの取り組みです。行政と地域の加工業者や食事業者などが連携して加工品開発や、栽培の拡大を図っています。

夏秋イチゴと言われるイチゴは、四季なりイチゴと呼ばれ、冬春のイチゴとはタイプの異なるイチゴです。四季なりイチゴは酸っぱくて美味しくないというのが定説です。しかし、新しい品種や適地適作によって、夏でも美味しいイチゴが生産できるようになりました。
今回実際に2品種を食べてみましたが、どちらも美味しいと感じました。今の時期と夏場では当然糖酸比などが変化しますが、食味は多少異なるはずです。
しかし夏場はある程度酸味のあるほうが、美味しいと感じられると思いますし、想像していたよりもずっと美味しいイチゴでした。

生食夏イチゴは、ブルーオーシャン

生食の夏イチゴは、まだ需要がない、ほぼ手付かずの空白地帯です。誰もが好きなイチゴが、夏に食べられるというのはとても魅力的です。ちょっと酸っぱさもある甘いイチゴを夏に冷やして食べたら、それはそれできっと美味しいと思いますし、潜在的な需要はあると思います。
三陸の夏イチゴが新しいマーケットを産み出すことができたら、新しい三陸の産業になることも夢ではないと思います。

大船渡といえばさんま から 大船渡といえば夏イチゴ に

かつてはさんまが有名だった大船渡ですが、近年はめっきり漁獲量が減少してしまったそうです。「大船渡といえばサンマ」から「大船渡といえば夏イチゴ」のまちになることを期待しています。そのためには、地域の人達をどう繫がっていくか、どう巻き込んでいくか、今回の講演を参考にしていただければ幸いです。


夏イチゴは、震災を乗り越えた三陸の地域の皆さんの夢や未来を創ることが出来る可能性があります。夏いちごを食べに、多くの方々が三陸を来訪するくる日が早く来ることを心待ちにしています。