2023年12月1日に、農林水産省 中国四国農政局の有機農業推進フォーラム(オンライン)にて、
基調講演を行いました。
今回の講演のタイトルは、「多様性時代の農と食の繋がり方」
有機農業を推進したり、有機農産物の消費拡大を促すには、
農と食の繋がり方を再考する必要があるということを、お伝えしたくて、
このタイトルにしました。

有機農業が拡大するということは、有機農産物が特別でなくなること

有機農業が拡大するということは、有機農産物が特別でなく当たり前になることだと思っています。
そのためには、どうしたらいいか?

生産者を増やす事、消費者に有機農産物について認知を向上させることなど具体的なアクションがありますが、その前に、ちょっと考えるべきことがあるのでは?というのが私の持論です。
それが、農と食の繋がり方です。

これまでも、農と食の繋がりは重要と言われてきましたが、
今の現実をみると、ちゃんと農と食が繋がっているとは言えない、
農と食の距離は近づいていないのが現状だと感じます。

人によって、見方は違うかもしれませんが、
私は大学などで若い人達に接したり、各地に行ったり、東京で生活する人と交わることが多い中で、
日本全体として、農と食の距離は縮まるどころか、かえって遠くなっている気がするのです。
SNSなど繋がるための便利なツールは産まれてきましたが、
実際に人と人が繋がる、理解し合うというところまでには至っていないからです。

有機農産物を広めていくためには、まず作る人と食べる人の距離をどうやって縮めるか、
どういう関係性を構築したらいいかというポイントを考えたほうが良い
と考えています。
マーケティング的にも、基本的な方向性や戦略を考えずに、戦法に走るのは良くないですよね。

では、どうしたら関係性が構築できるかですが、
時代にフィットしたやり方、考え方が必要です。
そのためには、農業者も消費者もこれまでの考え方や意識を変える必要があります。

どうやってこれまでの意識や考え方を変化させたらいいか


農と食を繋ぐという大局的な観点からいうと、有機栽培だからとか普通の栽培(慣行栽培)だからこうした方が良いという違いはあまりないと考えています。
ただ、有機農業のほうが、これまでの歴史や背景などもあって、誤解や思い込みがあったり、ちょっとややこしい状況です。
有機農業の話となると生産者同士の相互理解も難しいですし、生産者と消費者や実需者間の相互理解もなかなか進まないのです。
(私は、有機と慣行のどちらが良いという二者択一的な考えをしている訳ではありません。
有機農業の生産者も慣行農業の生産者とも繋がりがあります。
フラットな立場でありたいと思っています。)

では、どうやって意識を変えていったらよいか?ですが、
講演では具体的な例として、私がオーガニックビレッジ事業でおこなってきた事例などを紹介しました。
私は山形県東置賜郡川西町でやってきたことと、なぜそれを行ってきたのか、どういう効果があるのかということを説明しました。

実際に、地域内でほとんどゼロの有機農業者をどう増やすか、長年慣行農業が主産業の町の住民の人にどう理解してもらうかを、どういう関係性を構築するかという考え方をきちんとベースにして、
ここ数年いろいろとアドバイザーとして関わってきました。
2年以上経過して、これまでやってきたことが、やっとようやく芽がでてきて良い方向に進んできていて、良かったとホッとしているところです。

農と食の繋がり方、関係性の構築の方法は一つではありません。
こういうやり方もあるということを是非知って頂き参考にしてもらえればと思います。

今、時代は大きく変化しています。人は変化を怖がるものです。しかし、この講演で一番伝えたかったのは、今の時代にあったこれからの農と食の繋げ方を考えていかなければならないということです。

当日の講演は、生産者、JA関係、市町村の農政担当者、消費者、学生などが100名以上の方々が視聴してくださったようです。
この講演は有機農業を拡大していくための一助になれば幸いです。

山形県 川西町 有機枝豆 親子収穫体験