農園野菜セットを使ったキッチンライブも行いました

春から食のオンライン講座の企画・運営のコンサルティングなどに関わっています。
コロナ禍になり、リアルからオンラインをベースとした事業全般の構想の練り直しや、新しいコンテンツ企画運営などを支援したり、お客様と一緒に行ってきました。

夏頃には、最初は珍しかった食のオンライン講座も最近ではあちこちで開催されるようになり、バラエティ豊かです。また、少しずつ人々のリアルな活動が戻ってきて、オンラインイベントや講座の価値を改めて考える時期にきていると思います。

実際に立ち上げから関わり、企画・運営、そして講座やワークショップの講師までやってみて、食や料理のオンライン講座の企画・運営のノウハウを蓄積できてきたので、今回はそのポイントについてお話しをしたいと思います。

作り手と食べ手を繋ぐイベント 平飼い卵でマヨネーズ作り

リアルとオンラインは別もの

これまでリアルで開催していた講座を、オンライン化するのは簡単な事ではありません。
ここ数か月、トライ&エラーをしながらオンライン講座を作ってきましたが、リアルの対面講座とはまったく別モノだと実感しています。
何が別ものかというと、全てでしょうか。
講座の組み立て方から、販促、事後処理まですべて違うと思います。
ですから、まずは頭を切り替えることが大切です。

リアルとオンラインの違いを一言でいうと、画一的に進めやすいリアルの講座と、柔軟に状況に応じて進めるオンライン講座でしょうか。
食べ物を扱う、食べるという意味で、他のオンライン講座よりも難しい点があるとは思いますが、ポイントを掴むことで、講座のクオリティや満足度をあげることが出来ると思います。

3種類のゴール設定

まずは、どんな講座を行うのか、講座やワークショップのゴールを明確にします。
食のオンライン講座やイベントなどの目的やゴール設定は、お客様の反応を見ているとだいたい3つに分かれると思います。

①自分の食生活を豊かに向上させるために知識、情報を得たい (知ることの楽しさ)
②一人では作れないけれど、講師や皆と作ればできる   (チャレンジする楽しさ)
③みんなでワイワイしながら一緒に作るのが楽しい
                   (食を通じたコミュニケーションの楽しさ)

この3つのゴールによって、進め方や内容を決めていくとよいと思います。
ただし、この3つのゴールがひとつのイベントで混在している場合もあると思いますので、何を主とするイベントなのかを、どんな人がターゲットなのかを事前の告知などできちんと伝えておく必要があります。その上で、それぞれの目的の人が満足するようなコンテンツや運営方法の工夫が必要ですね。

柔軟に状況に応じて進めるオンライン講座

食のオンライン講座で顧客満足度をあげるために、押さえておきたいことがあります。
それをお話ししていきますね。

想定外が当たり前

 実際にオンライン講座やワークショップを行ってみて、準備した通りに進行して終了することは殆どありませんでした。本当に想定外なことが起きます。
想定外の事象は、大きくわけて3つの事に分けられると思います。
 ①通信状況やデバイスに起因する事
 ②参加者の状況に起因する事
 ③参加者からの興味関心に起因する事

それぞれの事に関して、いかに準備をしたり、心づもりをしておくかが鍵です。
また想定外の事象は、デメリットだけではなく、メリットも大いにあります。

①通信状況やデバイスに起因する事

オンライン講座はインターネット通信を用いて行いますので、通信状況が不安定になったり、うまくzoomに入室できなかったり、音が悪かったりと色々なことが起きます。
参加者のオンライン講座や通信機器への慣れ具合もあります。また、PC、タブレットやスマホなどデバイスによってうまく画面が切り替わらない、ひっかかるなどの事象も起こるようです。

②参加者の状況に起因する事

リアルでは、皆で同じ空間で同じ条件下で料理を同時に作っていきますが、オンラインではそうはいきません。ですから一人一人違う結果が出やすくなります。
例えば、コンロがガスとIHの違う、鍋が琺瑯とステンレスで違う、ボウルのサイズが違う、油や砂糖など基本調味料や材料のサイズや質が異なるなど、それぞれ条件が違うのです。加えて料理の経験や腕も一人一人違うので、料理の進捗状況も異なります。

例えばジャムを作る場合、鍋が違い、熱電源が違うと、ジャム化するまでの時間や火加減が異なるということです。砂糖が上白糖かグラニュー糖でも違いますし、りんごのサイズや状態によっても加熱時間も異なってきます。

またリアルなら、遅い参加者を講師や助手が手助けすることが出来ますが、オンラインでは、声かけでサポートは出来ても、実際に手が出せませんよね。早い人、遅い人、上手な人、つまずく人、いろいろです。

また、料理の場合、参加者の画面が暗いと、鍋の中やボウルの中の状況が見にくいので状況が判断しづらいこともあります。明るさは重要ですね。

③参加者の興味関心に起因する事

オンライン講座の講師をやってきて、想定外の質問をいただくことが沢山ありました。
参加者の食の知識や経験はバラバラな場合が多いので、基本的な事がわからないので質問する人もいれば、「ぜひオリジナルでこんな風にしてみたい」というご希望もあります。

糠床作りで、糠床の目安となる固さを、「味噌ぐらいの固さ」とお伝えしたのですが、そもそも味噌の固さというのがわからない方がいらっしゃいました。即座に別の言い方で表現できることの大切さをその時感じました。想定外に対応する力がオンライン講師には必要なので、まだまだこれからも修行はつづきまだまだ続きますね。

オンラインは画一的な場でないので、一人一人の自由度が高くなるなります。すると参加者からの質問の幅がすごく広くなります。それに答えられるような知識や情報や臨機応変さを提供側はもっていないといけないということにもなりますね。

ジャム作りの材料の例

オンライン講座のメリット

多様性から学び体験できる場 ~みんな違うメリット~

一人一人の条件が違えば、出来上がるものも当然違ってきます。参加者が満足いく出来であったり、今一つ思ったのと違うかなと思うこともあります。それぞれ違う出来栄えであり、その事例が参加者の数だけ沢山あることは、メリットでもあります。
どう違うのか、何故この人と私は違うのか?という沢山の事例を一度に比較でき共有できるのからです。リアルの講座では、自分の(自分のテーブルの)作品と他の人のを比較するのはなかなか難しいのです。人は一つの事例からよりも、いろいろな事例を比較検討することによって、「ああ、こういうことが大事なんだ」とか「ここがポイントなのね」「ここが違ったから上手くいかなかった」と理解でき体得しやすくなります。

自分にフィットしたやり方を見つけやすい

料理をするときに、条件や道具が異なれば違う結果になります。自分の状況にあったベストな方法を見つけるのが、成功の秘訣ですね。
 ミキサーを使ってソースを作った時に、参加者のミキサーは容量、タイプ、モーターのパワーすべてがそれぞれ違うので、画一的な手順ではダメだったことがあります。プレゼンター(講師)が、それぞれの方にあったやり方を提案できれば、それぞれに合ったベストな方法が見つけられます。それがオンラインの食の講座のメリットです。
料理のやり方は「これじゃないといけない」という唯一のものではないから、自由でいいんです。これまで解決できなかった顧客のニーズに対応できる新しい形の料理教室のスタイルになると思います。

農場とキッチンを繋ぐオンラインイベントにてキッチンから配信

参加者の満足度をあげるポイント

個別対応できるスキルのあるプレゼンター

色々な人が集まっていますが、基本的にお一人ずつあるいはご夫婦やご家族単位での参加なので、通常の料理教室のように誰かと1テーブルで分担作業をして、全部の工程に携われないということはありません。基本的に自分で最初から最後まで作り上げます。それはメリットですね。
もしリアルでパーソナルレッスンをすると、一対一で行うので講座料が高額になりますが、それがリーズナブルに出来るという考え方も出来ます。しかし、お客様の満足度をあげるためには、お一人お一人への気配りやきめ細かい対応も重要です。
 そのためには、プレゼンター(講師)の力量が問われます。一方的に自分のやり方を教えるだけの人はちょっと厳しいと感じました。

ファシリテーション能力の重要性

食のオンライン講座の場合、プレゼンターには、料理の教え方や伝え方に加えて、ファシリテーション能力が重要です。自由度が高く、想定外のことが起きるのが当たり前なので、あらゆることに対応するの能力と、参加者に対して安心な場作りをしていくかという配慮が必要だと思います。

オンライン上に集まってくださった参加者と運営側、参加者同志のコミュニケーションを円滑にして、一方向でなく、双方向で場を創っていくことで、オンライン講座は盛り上がりますし、満足度が高くなります。そこがオンライン講座の魅力でもあります。
講師自身がファシリテーションも行う場合もあれば、誰か別にファシリテーターをしてもらう場合など、講座やイベントの内容によって異なってきます。

私はワークショップデザイナーの資格を持っていて、そこで学んできたことがオンライン講座でとても役に立っています。ワークショップは、一方的に教えるのではなく、体験と知識をからませながら、安全な場を作り、自ら学び身に付ける学習スタイルで、教える側・運営側にはファシリテーション能力が求められるからです。

ファシリテーターとテクニカルスタッフ

料理を作るなど作業を伴うオンライン講座やイベントの場合、プレゼンターが、ファシリテーターを兼ねると、作業しながら画面をみて声掛けしたりしなければならなくなります。それはかなり難しいと思います。お客様の進捗状況を把握して、声掛けしたり、フォローをしっかりするには、スキルのあるファシリテーター役がいると助かります。
また、zoomなどを使ったオンライン講座の場合、スポットライト機能や、ブレイクアウトなど細かい操作をファシリテーターが行える場合もあれば、ある程度人数が増えれば、ファシリテーションだけで手いっぱいになることもあります。状況によって、目的に合わせて、役割を分担した運営体制を考える必要がありますね。

きめ細かいフォロー体制

そうはいっても、一人一人異なる仕上がりになれば、これでよいのだろうかという疑問や不安が参加者には湧いてきます。その不安や疑問にどう向き合うかが、顧客満足度をあげるポイントだと思います。しかし、ひとりひとり個別対応すると、どうしても手間と労力が派生するので、そこをどう工夫して、運営側の負荷を大きくせずに行うかが大切です。
どこまで、全体の中で個人をフォローするか、別枠でフォローするか、時間内にフォローするか、時間外でフォローするかなどやり方は色々です。

企画・運営した中で、「ぬか床作り」講座があります。ぬか床作り自体は難しいものではありませんが、そのあと、糠漬けを美味しく漬けるようになるために1か月以上床を育てなければなりません。菌を発酵させるので、床の状態は刻々と変化していくので、「これで本当に大丈夫だろうか」と不安になりがちです。そこで私達の講座では、講座後のフォロー体制を整えて、お客様をサポートする体制を整えました。

食材の準備と調達

食のオンライン講座の場合、これも大きなポイントです。
ゴール設定によって、食材をあらかじめ参加者に送付するのか、各自用意してもらうのかと2つのケースがあります。どちらも実施しましたが、それぞれメリットデメリットがあります。どこがその講座のワクワクポイントなのかによって決めるのも一つです。また講座の内容や難易度によっても考慮すべきでしょう。事前に送付する場合は、送料や配送のリスクもありますので、食品や配送のノウハウをもった人がいると助かります。事前にきちんと調べてベストな方法をみつけることも重要です。

ジェノベーゼソース作り講座の材料 

食のオンライン講座の今後

遠く離れたところの知らない人とでも、自宅にいても、誰かと一緒にコミュニケーションをしながらもの作りができるのが食のオンライン講座の楽しみです。
リアルとは違う面白さや楽しさに気が付いた参加者の方々は、コロナが収束しても
ご自身の目的や状況に応じて、参加者はリアルとオンラインを使い分けていくでしょう。
運営側は、今回ここに書いたようなポイントを把握した上で、
リアルの単なる代替案でない食のオンライン講座を作り上げるノウハウを構築する必要がありますね。

また、リアルとオンラインを同時に行うような講座も増えていくでしょう。
その場合は、実はもっと複雑になるので、運営側に益々スキルやノウハウが必要となっていきます。
これからオンライン講座も精査・進化のフェーズに入ってきています。
この記事がヒントや参考になればと思います。

オンラインでのコンサルティングも承ります

食のオンライン講座を始めてみたいがノウハウや経験がない方、やってみて上手くいかない点の解決方法を知りたい方など、どうぞお気軽にご相談下さい。
実際に企画・運営してきたノウハウやポイントをお伝えしてサポートいたします。
(内容によっては、オンラインでの単発のコンサルティングもOKです)