南房総の歴史ある駅弁と仕出し弁当のリニューアルをコンサルティングしました。
これまでの伝統を残しつつ、時代にフィットした形の商品にすることで、収益改善することがゴールです。業務の効率化を図りながら、見た目も味も新しい弁当を作っていきました。

駅弁のニーズは激減、弁当ビジネスの厳しさ 

あの有名な信越線の峠の釜めしも、新幹線の開通によって駅弁ビジネスから、サービスエリア運営など別のビジネスにシフトした例があるように、駅の利用が減少すれば、当然、駅弁需要も減少します。
今回の南房総・安房鴨川の南総軒様も、列車利用者の減少に伴い駅弁の需要は減少しています。
またコンビニやチェーン弁当やなどの台頭で競合もあり、地域に根差してきたお弁当やさんが非常に苦戦を強いられています。前に他の地域でもお弁当屋さんのコンサルティングをやったことがあるのですが、同じように悩んでおられていて、新しいビジネスモデルをどう構築していくかというのが最終的な課題だと思います。

いきなり商品開発やリニューアルは難しい

今回、経営改善のための商品開発と改善というコンサルティングが最初の依頼でした。しかし、最初にヒアリングをした時に、いきなり商品開発や商品改良に取り組むのは難しいことがわかりました。

商品開発や改善をすれば、経営状態がすぐに良くなるということはないので、まずは一緒に現状を整理分析する作業から始まり、すぐにできる小さな改善ポイントから手をつけることにしました。既存商品の見直しを行った結果、今回の商品リニューアルになりました。。

お弁当は価格競争が激しい

お弁当は多種のパーツを詰め合わせものです。ひとつひとつ手作りしていたら、ものすごい手間とコストがかかる商品です。
それを効率よく、コストを抑制して作るためには、パーツを集めて詰めるだけにすることです。

実際に、スーパーやコンビニのお弁当は、すでに出来上がっている惣菜をバックヤードや工場で詰めて、ご飯だけ炊いてパックしたものが多いのが現状です。

しかし、もとの惣菜を製造しているベンダー企業が同じなら、どこも似たような味です。組合せだけがちょこっと違ったり、上に乗っている野菜がちょっと違うだけでは差別化は難しく、当然価格勝負になっていきます。

昔ながらの手作りをしている小規模弁当製造業者は、大きな工場で作られるようなお弁当に価格で勝負することはできません。別の方向性で改善を考えていく必要がありました。

改善のポイント オリジナル性を打ち出す

南総軒様の場合は、仕出し弁当も駅弁もオリジナル性を伝えていくかがポイントになると考えました。

駅弁は、地元に伝わる伝統料理や地元食材にこだわっていたり、手作りにこだわっていても、そこがお客様に伝わっていないのがとても残念な点でした。

その他、イベント用などに仕出し弁当やオードブルなども製造しているのですが、商品としては、スーパやコンビニ弁当と比較して、特色のあるお弁当ではありませんでした。

駅弁のリニューアル

南総軒さんの駅弁は数種類あるのですが、先代が工夫されてきただけあり、どれも特徴があり、オリジナル性もあります。
しかし、何十年間も変わらない内容と見た目で、現在のお客様が買いたいと思うような見た目と乖離してしまっていました。

中身がよければ売れるというものではなく、美味しそうに見える事、美味しい事両方が重要なので、以下のように改良しました。

あさり飯 リニューアル前
あさり飯 リニューアル後

さんが焼きは漁師飯であるなめろう(鯵、鰯、秋刀魚などを味噌と一緒にたたいたもの)を焼いた房総名物の料理です。このさんが焼き弁当も、第一印象がとても地味で、せっかくのさんが焼きが目立たなかったので、配置や見た目の手を加えました。

房総名物 さんが焼き弁当
リニューアル前
房総名物 さんが焼き弁当
リニューアル後
手作りの鯵のそぼろと酸が焼き
錦糸卵がのっています
わかしお弁当
リニューアル前
わかしお弁当
リニューアル後

地元の食材を活用したい

南総軒さんは、千葉県産の米や海苔、南房総のひじきなど地元産にこだわって弁当を作ってきました。しかし、近年千葉の海苔や千葉のひじきは高騰していますし、農産物の生産者は減少しています。地元産の食材を使いたくても、コスト的に難しくなっています。そこで、食材の使用量や使い方を調整していくことで、調整を図りました。

お弁当という中の多様なニーズと多様な食材を上手にマッチさせることが、サスティナビリティにも繫がります。その土地の資源を大切に有効活用することで地域の食資源を守ったり発展させることに繋がります。

仕出し弁当は、シーンやターゲットを明確に再考

お弁当のアイテムごとにターゲットや食べるシーンや、求められる要素が異なります。長年やっているとそれまでのやり方が惰性になってしまったり、時代とのギャップが産まれてきてしまいます。時代のニーズをお伝えしながら、ミーティングを重ねました。また、原価計算も改めてして、見直しをしました。

仕出しも鴨川らしいオリジナルメニューを作る

鴨川らしいオリジナルメニューを作ってみましょうと提案をしました。
スポーツ弁当は、サーフィンやスポーツ関係のお弁当のニーズに対応しており、がっつり系のお弁当なのですが、コストは抑えて、コンビニ弁当と違う特徴を出したいという狙いでした。
鴨川はレモンの産地です。レモンを使って、唐揚げに「レモンソース」という甘酸っぱいレモン果汁を使ったタレをかけました。レモンは疲労回復にも繫がりますのでスポーツ選手にも合います。
レモンを使う事で、単調になりがちな揚げ物系弁当の色のアクセントにもなると考えました。

スポーツ弁当 鶏唐揚げ鴨川レモンソース

人に優しい食・温かみのある食

こちらの企業様は、「お客様に喜んでいただきたい」という強い想いを持って、長年お弁当を製造されてきました。
今回いろいろと手を加えましたが、もともと持っていらっしゃる「人に優しい食、温かみのある食」という強みがきちんと伝わって、これから新しい展開をしていっていただけたらと願っています。

波の伊八弁当 リニューアル後
伊勢えび炊き込みご飯&タコ飯